コミュニケーション・デザイン・センターは、「コミュニケーション・デザインでくらしを豊かに、つながりで心豊かに」を
モットーに、コミュニケーション・デザインに関するリサーチ、研究、開発、啓蒙を目的に活動中。
「デザイン」の価値を高め、多岐にわたるつながりを追求しています。
毎回、世界で活躍する日本のクリエイターに「デザインの未来」を伺うコンテンツ「FUTURE of DESIGN」では、パティシエの鎧塚俊彦氏にインタビューを実施しました。「宝石のような美しいスイーツ」という言葉があまり好きではないという鎧塚シェフが語る、スイーツづくりの難しさ、魅力とは?常に変化を楽しみ「やりたいこと」に果敢にチャレンジし続ける鎧塚シェフに、スイーツのデザインや未来の展望について伺いました。
クリエイティビティを刺激するアートサイエンスの発信地が誕生!
—大阪芸術大学アートサイエンス学科棟—
2018年11月、大阪南河内郡にある大阪芸術大学に新設されたアートサイエンス学科の校舎が竣工しました。床面積は約3176 平方メートル。地上2階、地下1 階の建物で、3つの大きな展示スペース、4つの講義室、5 つのスタジオ他、教員の研究室も併設しています。1階部分はほとんどの壁面がガラスで、メインの入り口以外にあらゆる方向から出入りが可能な、開放的な空間です。特徴的なのは、三層に重なったひさしのような幅広い屋根。建物が建つ丘に連なるように緩やかな曲線を描くその特徴的なデザインは、大学の新しいランドスケープとなっています。
このクリエイティブの未来を見据えた学科棟のデザインを手がけたのは、世界的建築家の妹島和世さん。学科を超えてさまざまな人たちが集まる、ボーダレスな空間を目指しました。「人と人がここで出会い、混じり合うことで新しい発見があったり、新しい価値観が生まれたりすることが、アートサイエンスという学問につながっていくと考えている」と話します。新校舎でもう一つ特徴的なのが、床を中心に設置されたサイン。これはアートサイエンス学科のVIを手がけたアートディレクター、浅葉球さんが担当し、CDC内藤が全体のプランニングを行いました。設計の初期段階から関わることで、サインと建物の一体化より高度なものにすることができたといいます。この新校舎は建築界をはじめ様々なメディアでも話題となり、「ブレーン」「ブルータス」「GA JAPAN」「新建築」「美術手帖」他多数で取り上げられています。
アートサイエンス学科棟という大きな器は完成しましたが、これからは、ここをどう使って「未来に向けた探求・開発をしていくか」について、大学と学生たちが考えていくことになります。それこそが、この空間を"大学の校舎"ということを超えた、「クリエイティブがより機能する場」「人々のくらしを更新するラボラトリー」として、アートサイエンスの発信地へと変えていく原動力となることでしょう。
AIは、Intelligenceを超えてLifeを指向する。
生命の新種「ALife」は、世界を更新していくのか。
EPISODE 1 では、「ディープラーニングが人間のコントロール下を離れて学習が進むため、自ら思わぬ方向に進化していく可能性が ある」と述べました。
昨今の AI における学習技術の発展はめざましく、画像認識の精度は人間のレベルを超えたとされています。例えば、2015 年に Google が発表した「DeepDream」や、2016 年に「AI がレンブラントの新作を書いた」などのニュースは、記憶に新しいことでしょう。 また画像認識の分野以外でも、IBM ワトソンを活用した、シェフ・ワトソンによる新たなレシピ開発など、世間を驚かすような AI 進化の話題が続いています。
一方で、AI の進歩が人々の不安を掻き立てはじめているのも事実です。オックスフォード大学の AI 研究者マイケル・A・オズボー ンが提示した「なくなる職業リスト」がセンセーションをひきおこしたのは、その一例といえるでしょう。また、アメリカの発明 家レイ・カーツワイルの唱えるシンギュラリティー論もまた、当初こそ多くの人が懐疑的でしたが、2016 年 Google の囲碁 AI「alphaGO」が世界最強棋士に勝つと、いよいよ現実味を帯び始めてきました。 こうした潮流に対する人々の不安や嘆きは、ロボットや AI の特異性を人間目線で判断していることに起因していると言えるのでは ないでしょうか。少し視点を変えて捉えてみるならば、別の地平が拓けます。
2016 年「WIRED」の初代編集長ケヴィン・ケリーは、「AI を『Alien Intelligence( 異質の知能 )』の略と言うこともできる」と発言しました。 ケリーは、この Alien と言う表現に、AI が人間よりすごいかどうかではなく、人間の思考とは全く異なる思考・能力を持つとのだ、 という意味を込めたのです。
同じ志向として、「ALife」(人工生命)の研究が近年活性化しています。Alife 研究をリードする池上高志氏は、コンピューターやロボッ トから人工的に生命、あるいは生命とおぼしきものをつくりだす試みを通して、生命の定義の更新。「機械と人間の関わりあい」を 生み出すには、「Intelligence( 知能 ) ではなく Life ( 生命 ) と言う大きな箱が必要」だと話しています。
AI を「生命の新種」としてとらえようという新たな概念「ALife」。日本においてはまだ浸透しているとは言えず、一部を除き研究 もあまり進んでいないのが現状です。
このような ALife の現状や、アートとサイエンスの最新の関 係を俯瞰して考えていく書籍『ART SCIENCE IS. アートサイエ ンスが導く世界の変容』(『BoundBaw』編集長 塚田有那著)を、 2018 年夏に上梓しました。本書は大阪芸術大学に新設された「アートサイエンス学科」の創設にむけてローンチされた、世 界のアートサイエンスシーンを伝えるウェブメディア 『BoundBaw』を通して得られた最新の知見から、アートサイエンスの現在を紐解いていこうというものです。
次回 EPISODE3では、先述した「ALife」をめぐる日本国内に おける取り組みや、立ち遅れている現状やその理由について 触れていこうと思います。