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河口洋一郎氏 CGアーティスト

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日本がサバイブしていくために、
芸術やデザインの力が重要になる

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種子島での経験がすべてのはじまりだった

—河口さんは、日頃、どのようなものからインスピレーションを受けているのでしょうか?

河口:僕は幼少期を種子島で過ごしたんですけど、そのときからずっと興味があることは古生代やカンブリア期といった太古のことなんです。たとえば、5億数千年前から生きているクラゲや巻き貝、節足動物なんかのことを考えて、それが進化したらこうなるんじゃないかというモデルをつくってみる。すると、彼らの5億年先の姿が見えてきて、作品ができあがるんです。5億年前と5億年先って繋がっていないようで、じつはきちんと繋がっている。だから、5億年前の生物の動きや形状を知ることで、5億年先の未来がわかる。そうして完成したデザインを未来に持っていくことが僕の夢なんです。

—河口さんは、これまでに“深海”や“宇宙”をテーマにした作品を数多く発表していらっしゃいますが、こうした作品はインスピレーションされたものと、どのように結びついているのでしょうか?

深海の水圧や浮力の問題と、宇宙の無重力の問題は、僕にとってものすごく近いものなんです。たとえば海の中に入ると体が浮きますよね。それって宇宙空間の無重力の状態に近いと思いませんか? そう考えると、宇宙に存在する生物は、深海の浮力に対応した生物に近い存在ではないかと思うんです。ほら、よく火星人がタコみたいにウニョウニョした絵で表現されますよね? そのイメージです。人類だって、無重力空間で進化したら骨が退化してウニョウニョになると思うんですけどね(笑)。そういう意味で、かたちのデザインは進化の過程を考えていくと非常におもしろいんです。

—もしかしたら人類が火星人みたいになるかもしれませんね。ところで、河口さんが進化にこだわりを持っているのはなぜなのでしょうか?

河口:生物の根本問題は、どうやってサバイバルしていくかだと考えているのですが、人類はまだ歴史が浅いし、まだ進化の途中にあると思います。そして、人間の進化を無重力空間が加速度的に押し進めてくれる気がするんです。宇宙に行ったらきっと人間は変化する。だから、僕は宇宙に興味があるんですよ。

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先端テクノロジーの力で未来のデザインを表現する

—河口さんの創作活動のなかでテクノロジーは欠かせない存在だと思いますが、クリエイションとの関係についてはどのように考えているのでしょうか?

河口:僕の作品は、先ほども話した通り、すごく自然的なものがインスピレーションとしてあるんです。それはなぜかというと進化にこそ、デザインがあると思うから。だから、ドローンのようにもともと自然界に存在しないようなものには興味がないんです。昆虫や魚や鳥といった自然界に存在するものにこそ未来がある。でも、それをそのままのかたちで進化させるのではなく、先端テクノロジーを用いて超越させたいという思いがあります。発想のアイデアはすべてこれまでの数億年の間に存在した生き物の進化の過程にあるんだけど、それを先端テクノロジーの力で一気に飛び越え、未来の姿を表現してしまおうというわけです。そして、その挑戦こそにデザインの面白さがあると僕は考えています。だから、僕は現世にはあまり興味なく、常に数億年後のことを考えて作品を制作しているんです。

—河口さんがそこまで未来に目を向けているのはなぜなのでしょうか?

河口:太陽や銀河にも寿命があって、50億年後には消滅していると言われているんです。そうなったら、せっかくの人類の文化もすべてなくなってしまう。だから、この銀河がなくなる前に、ここを脱出して別の銀河に行かなければいけません。そのためには、今ではなく、未来に目を向ける必要があるのではないか、と思うんですね。でも、光のスピードでは遅すぎるし、人類の寿命も100歳ぐらいしかないので、はやく人工冬眠ができるようにならないかなと思っています。僕の目標は2050年まで生きることなので。

—2050年ですか?

河口:はい。動物でも熊なんかは冬眠してひと冬は越せるから、そのメカニズムが解明できえれば可能性はあると思うんですよね(笑)。そして、別の銀河に飛び立つときは、今までつくってきた作品を仲間にしていきたいですね。地球が滅びても自分だけは絶対生き延びて、後世に伝えていく使命がありますから(笑)。

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デザインを中心とした都市づくりが、
日本の未来には必要

—先ほどの河口さんの話のなかでサバイバルという言葉がありましたが、これから先、日本が世界と戦っていくためにはどのようなことが必要だと思いますか?

河口:これまで日本は文化を輸出することに重きを置いてきましたが、これからはもっと質の高い観光客を呼び込むような施策が必要だと思います。さきほども言ったように、このままのんびりしていたら、銀河系の滅亡とともに今まで築いてきた人間の歴史や文化はすべて滅びてしまう。だから、日本もサバイブしていくためのデザインを考える必要があります。今の日本は、日本文化を輸出することが主体になっていて、内にある素晴らしいものを高めようとしていませんから。

—では、日本が世界を相手に生き残っていくためには何が必要なのでしょうか?

河口:ミケランジェロやレオナルド・ダ・ヴィンチ、そしてガウディたちがつくった建造物が多くの人を呼んだように、日本も列島全体で外国人が興味を示すような都市づくりを、デザインを中心に考えて築いていかなければいけないと思います。とくに日本は地域ごとに伝統に根ざした文化がありますから、そういったものを活用して魅力的な都市を築いていけるはずです。たとえば日本が得意とする最先端のバーチャル技術やロボット工学などのテクノロジーを使ってみたらどうでしょうか。そうすれば、日本にもっと観光客を呼び込むことができるし、芸術性に富んださまざまな都市をつくっていくことにもなるはずです。

—2020年には東京オリンピック・パラリンピックもありますが、こうしたイベントは日本が生き残っていくためための起爆剤になったりするのでしょうか?

河口:もちろんオリンピック・パラリンピックに向けた街づくりは必要ではあります。しかし、それはあくまできっかけであって、やはり重要なのは日本の伝統的な文化をどうするかだと思います。たとえば花鳥風月という概念がありますが、こうしたものを高度なデザインにまで昇華できるかが重要です。外国人からすると、日本はデザインと芸術に優れた高度で品のいい国なんですね。そして、龍安寺のように質素で細やかな侘び寂びを湛える文化と、東照宮のように豪華絢爛で奇抜な色彩を放つ文化の対比する価値観が共存している。これが日本人の特質であり、魅力なんです。これは世界的にも日本ならではのものだと思います。でも、日本にはシンボリックなものがありません。たとえばシドニーならオペラハウスがあるし、マレ—シアにはマーライオンがある。豪華客船で海外からやってくる富裕層の外国人が「日本にやってきた」と思わせるようなシンボルが必要なんです。そのためには、今から5年、10年がとても重要になると思います。その間の施策によって2050年頃の日本が貧しい国になっているか、豊かな国になっているかが決まるのではないでしょうか。

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河口洋一郎氏

コンピュータ・グラフィックスの黎明期からCG制作に携わり、今もなお精力的に活動を続けている河口洋一郎氏。1982年に発表したCGで生命体を生み出す『グロースモデル』は、世界中から注目を浴び、そして賞賛が送られた。そして現在、CG技術が発展した時代において、河口氏は何を考え、どこに向かおうとしているのだろうか? その思考の一端を覗かせてもらった。

http://individuals.iii.u-tokyo.ac.jp/~yoichiro/index.html

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